牧師室の窓から 2019年12月

✩12月4日、ここ十数年わたしたち教会の教会学校で、イースターとクリスマスに献金を送り、祈りのうちに覚えていたペシャワール会の中村哲先生が銃弾で殺害されました。中村先生の死を知らされたとき、思い起こしたのが、今から11年前に、中村哲先生の働きを現地で支援していた29歳の伊藤和也さんが銃弾で殺害されたときの中村哲先生の追悼文です。

 「伊藤和也君は、約五年間にわたって地道な活動を行ってきました。アフガンの村に溶け込み,アフガン農民の一人になりきって、全ての人々に愛されました。次第に砂漠化してゆく大地、餓死と隣り合わせにある農民たちの状態に胸を痛め、文字通り、人々と苦楽を共にしました。頑固とも言えるほど、ひたむきで誠実に働く姿は、彼に接する全ての農民に信頼感を与えました。・・・寡黙で愚痴一つこぼさず,村人たちの生活を思いやり、必死で汗を流す姿は多くの者に暖かい励ましを与えました。和也君は,決して言葉ではなく、その平和な生き方によって、その一生を以って,困った人々の心に明るさを灯してきました。成し遂げた業績も多々あリますが、何よりも、彼の,この生き方こそが、私たちへの最大の贈り物であります。平和とは戦争以上の力であります。戦争以上の忍耐と努力が要ります。和也君はそれを愚直なまでに守りました。・・・今必要なのは憎しみの共有ではなく、憤りと悲しみを友好と平和への意志に変えることです。」

 伊藤和也さんの名前を中村哲先生に置き換えれば、この文が中村哲先生への追悼の文になります。それだけに中村先生や伊藤和也さんの「生き方」にならい、憎しみではなく、友好と平和への意志を大切にしたいと願っています。

✩二千年前の最初のクリスマスの時、占星術の学者たちが幼子イエスさまを拝んだあと、天使から夢で告げられ,別の道を通って帰って行ったことを知ったヘロデ王はベツレヘムとその周辺一帯にいた二歳以下の男の子を,一人残らず殺させました。ボンヘッファー牧師はこの二歳以下の男の子たちを、「最初の殉教者」と呼んでいます。飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を証ししたベツレヘムとその周辺の二歳以下の男の子が最初の殉教者となったというのです。伊藤和也さんも中村哲先生もスタッフ5名も「飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子」を証しして殉教したことを心深く思わされた今年のクリスマスでした。

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