牧師室の窓から 2022年8月

牧師 田村 博

☆「酷暑」という言葉が連日のように用いられている今年の夏です。この状況を想定して、茅ヶ崎教会では聖書研究祈祷会を夏の間、休会にするという決断をいたしました。英国などの記録的少雨、毎年当たり前のようになった米国、オーストラリアでの山火事、インド地域の殺人的な熱波等々、世界に目を向けても明らかに地球規模での温暖化に伴う異常気象が見られます。にもかかわらず、ウクライナの地では連日のように爆弾が炸裂しています。その製造工程を含めなくとも(含めればその影響は計り知れない)、環境悪化に拍車をかけていることは間違いありません。その愚かさに一日も早く気づき、戦争を終了する決断がなされることを願っています。

☆8月7日は、日本基督教団の行事日・平和聖日でした。イースター(復活日)には洗礼式を行いましたが、この日には一人の姉妹の転入会式を行うことができました。すべてを導いてくださる主の祝福をお祈りいたします。礼拝後に行われた「平和を祈る会」では、C.チャップリン制作・主演の映画『独裁者』の一部(最後の演説部分)を鑑賞し、話し合いの時を持ちました。制作されたのは1940年です。当時米国内でも親ナチス的な人々がかなり存在し、制作中は妨害、脅迫状、クレームが多くあったそうです。それまでチャップリンは、サイレント映画にこだわっていましたが、彼はそのこだわりを捨ててこの作品(トーキー映画)を仕上げました。この作品には彼の強い使命感があらわれています。独裁者ヒンケル(ヒットラーを風刺)と瓜二つの顔の床屋チャーリーの二役をチャップリンが演じます。最後には取り間違われてヒンケルとして群衆の前で演説をしなければならなくなったチャーリー。戸惑いながら話し始め、やがて力強く、そして最後には隣国に脱出を強いられていた恋人ハンナに、その声はスピーカーを通して届きます。その演説には聖書の一節が引用されています。

「兵士よ。奴隷を作るために闘うな。自由のために闘え。ルカによる福音書17章に、『神の国はあなたがたの間にある』とある。ひとりの人ではなく、一部の人々でもなく、あらゆる人々にあるのだ。君たちの中にあるんだ。君たち、人々は力を持っているんだ。機械を作り上げる力、幸福を作る力を持っているんだ。君たち、人々が持つ力が、人生を自由に、美しくし、人生を素晴らしい冒険にするのだ。民主主義の名のもとに、その力を使おうではないか。皆でひとつになろう。」

 暗雲のように広がる全体主義を前にして、チャップリンは聖句の持つ力に希望の光を 

 感じていたに違いありません。

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