牧師室の窓から 2015年2月

★1月31日、ドイツのヴァイツゼッカー元大統領が亡くなりました。94歳でした。1985年5月8日(ドイツの敗戦記念日)、ドイツの連邦議会で行った『荒れ野の40年』という演説は今なお世界中の多くの人の心に刻まれています。  「5月8日は心に刻むための日であります。心に刻むというのは、ある出来事が自らの内面の一部となるよう、これを誠実かつ純粋に思い浮かべることであります。そのためには、とりわけ誠実さが必要とされます。」そして、「われわれは今日、戦いと暴力支配とのなかで斃れたすべての人々を哀しみのうちに思い浮かべております」と語り、戦争で犠牲になった一人一人を具体的に思い浮かべます。ドイツの強制収容所で命を奪われた六百万のユダヤ人を、戦いに苦しんだすべての民族を、なかんずくソ連、ポーランドの無数の死者を、ドイツ人としては、兵士として斃れた同胞を、故卿の空襲で、捕われの最中に、あるいは故卿を追われる途中で命を失った同胞を、殺された同性愛の人々を、殺害された精神病患者を、宗教上もしくは政治上の信念のゆえに死なねばならなかった人々を、銃殺された人質を・・・」と、戦争のゆえに死んだ人々を思い浮かべる一節にはいつも襟を正されます。  本年は戦後七十年です。戦争で犠牲になった三百万人の方々とともに15年に及ぶ日本との戦争で犠牲になった二千万人といわれるお一人お一人のことを哀しみの思い浮かべる誠実さをもちたいと願っています。

★18日(水)は灰の水曜日で、この日からレントに入りました。灰の水曜日というと、3年前の灰の水曜日、教会の近くで自転車ごと転んで、大腿骨を粉砕骨折し42日間入院を余儀なくされたことを思い出します。入院中、皆さんが日夜祈ってくださったことを思うと、感謝の気持ちでいっぱいです。あれ以来、自転車と決別し、ひたすら歩く生活です。預言者は「いかに美しいことか 山々を行き巡り、良い知らせを伝える者の足は。彼は平和を告げ、恵みの良い知らせを伝え 救いを告げ あなたの神は王となられた、と シオンに向かって呼ばわる」(イザヤ52:7)、と語っています。良い知らせを、平和を伝える足となっているか、反省する日々です。 新しい年を迎えました。今年は羊年です。ブロックホルスト(1825~1907)が描いた「よき羊飼い」という絵があります。イエスさまが片手に杖を持ち、片手に子羊を抱いて羊の群れの先頭に立って歩いている絵です。長年、東京の富士見町教会の牧師をされた島村亀鶴先生が、ご子息を亡くしたとき、ある先輩の方がこの絵を紹介しながら、「この絵をよく見ると、真っ先に来た親羊が、主イエスの手に抱かれた子羊を見上げている。そして子羊を見上げている目は、主イエスの御顔をも見上げている。この親羊は、その子に導かれて、イエスの御顔を拝している」、と話してくれたというのです。島村先生は、神さまの深い御旨を示され、慰められたとおっしゃっています。 わたしたちは昨年、親しい、愛する、大切な人を神さまの御手に委ねました。イエスさまの御手に抱かれたその人を見上げ、その姿に導かれ、イエスさまの御顔を拝しながら歩む一年をと願っています。

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