牧師室の窓から 2011年4月 

 大地震、大津波による壊滅的な被害に加え、福島第一原子力発電所の事故のため緊張、不安な日々が続いています。
 科学者の高木仁三郎さんは、1975年に原子力資料情報室の設立に参加し、専従世話 人、代表を長く務め、プルトニウム計画、原子力発電所が推進されることに警告を発し ていました。1998年7月、高木さんは悪性の病気であることが判明し、手術を受けまし たが、病をおして2000年4月の青森地裁の核燃料裁判の証人を引き受けました。7月 には抗ガン剤も効かなくなったのですが、このとき一か月で口述によって書き上げたの が『鳥たちの舞うとき』という小説でした。高木さんの最初にして最後の小説となりま した。この小説で高木さんは、鳥たちの舞いを通して原子力時代の終焉を歌いあげたの です。書き上げて二か月後の2000年10月、高木さんは逝去されました。『鳥たちの舞 うとき』の「あとがき」に、妻の久仁子さんがこう記しています。
 世界はますます明るい話題が少なくなり、暗くなる一方ですが、仁さん(仁三郎さん)はいつも〈しかたない〉や〈あきらめ〉からは何もうまれてこない、あきらめずにやっ てみなきゃ。人々の心の中に希望の種をまき、いっしょに育てていこう、というのが口 癖でした。原子力時代の終焉を見とどけられなかったのは心残りだったでしょうが、こ れからの社会をどのようにしたいのかは、これから生きていくひとりひとりが考えて実 現していくことでしょう。」
 この書を通して、高木仁三郎さんの警告の重さと共に、なお高木さんが「鳥たちの舞 うとき」を望み見ていたことを心深く思わされ、それだけではなく、高木さんから重い バトンを私たちが託されていたことを思うものです。

 ★イエスさまのよみがえりを祝うイースターです。イースター礼拝において、若い姉妹 が洗礼式を受け、礼拝後、四人の兄弟姉妹の転入を感謝し、祈りをもってお迎えします。どなたの洗礼のときも、転入のときも、お一人お一人の今日までの「心の旅」の重さとそ の方々のために注がれた祈りの重さをきちんと受けとめなければならないことを思わさ れます。このたびは五人の方を一度にお迎えします。この「重み」を教会員全員で共有し、洗礼、転入される方々には、茅ケ崎教会の今日までの歴史を共有して頂き、新しい年度、心を一つにして主に仕え、教会に仕えていきたいと願うものです。

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