牧師室の窓から 2009年7月

★「大賀ハス」をご存じでしょうか。1951年千葉の検見川の元東京大学グランドの地下 6メートルから発見された3粒の蓮の実が、内村鑑三先生の弟子で植物学者の大賀一郎先生 によって2千年前のものと鑑定されました。最初の2粒は発芽しませんでしたが、最後の一 粒が翌1952年5月に発芽し7月に開花しました。ピンクの大きな花でした。
 大賀ハスはその後、全国の各地、世界の多くの国々の公園に送られ、それぞれの公園で見事 な花を咲かせています。秋田の駅前の千秋公園でも夏になると大賀ハスがたくさん花を咲か せます。二千年前のイエス様の時代の蓮の実が全国、全世界で、数多くの花を咲かせている のです。大賀ハスの美しい花を見ると、伝道の困難に直面し、打ちのめされるようなとき、 いつも慰められ、希望を与えられます。私たちが蒔くみ言葉の種も時間がかかるかもしれま せんが、多くの実を結び、花を咲かせるのです。

★衣服デザイナーの三宅一生さんが7月14日のニューヨークタイムズに寄稿しました。こ ういう内容です。
 《オバマ大統領が4月にプラハで行った演説の中で、核兵器のない世界を約束したことが 私が心の奥深くに埋もれさせていたもの、今日に至るまで自ら語ろうとしてこなかったもの を、突き動かした。私は7歳のとき広島で「あの日」を経験した。母は被爆の影響で3年も たたないうちに亡くなった。「あの日」のことを封印し、壊すのではなくつくることへ、美 や喜びを喚起してくれるものへ、目を向けようとし、衣服デザインの道を志した。デザイン はモダンで、人々に希望と喜びを届けるものだから。広島市内で8月6日の平和記念式へオ バマ大統領を招待したいという声が高まっている。私もその日が来るのを心から願っている。 オバマ大統領が広島の平和大橋を渡るとき、核の脅威のない世界平和への着実な第一歩となっていくと信じている。》
 私は、三宅さんの文章に深い感銘を受けました。「あの日」のことを心の奥深く封印しつつも、 「壊すのではなくつくることへ、美や喜びを喚起してくれるものへ、目を向けようとした」 三宅一生さんの被爆後64年の歩みの重さを覚えました。今年の夏、重い口をようやく開い た三宅さんとともに、核の脅威のない世界平和をと、心から祈りましょう。

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