牧師室の窓から 2021年1月

牧師 田村 博

 わたしたちの暮らす神奈川県を含む首都圏の地域に、再び緊急事態宣言が発令されました。新型コロナウイルスの流行は留まることを知らず、第3波を迎え、危機的な状況に直面していることは間違いありません。医療関係者をはじめとして、多くの困難の中にいらっしゃる方々の上に、主の格別なお守りをお祈りいたします。

今回のこの流行の猛威は、決して「自然界の力」という一言で片づけられるものではありません。新型コロナウイルスが、どのような経路で社会に拡大していったのか、まだ確定に至っていません。しかし、もともと野生のコウモリが持っていたウイルスが、別の野生動物を介して人間にたどり着いたということはほぼ間違いないと言われています。過去に多くの死者をもたらしたSARS(重症急性呼吸器症候群)、MARS(中東呼吸器症候群)、エボラ出血熱なども同様の感染経路をたどっています。これらの総称として「ズーノーシス(動物由来感染症)」という言葉が使われるようになってきました。この「ズーノーシス」について、日本自然保護協会評議員であり共同通信編集委員である井田徹治氏は次のように記しています。

「こうしたズーノーシスは2000年代以降に多発している。そしてその背景に、自然破壊や野生動物の野放図な利用の拡大があることを多くの研究者が指摘している。主要な原因の一つが熱帯雨林帯での森林や地下資源の開発だ。これまで一部の人しか足を踏み入れなかった熱帯林の中に巨大な道路が建設され、その先に大量の労働者が送り込まれる。労働者のキャンプでは給食などはないので、彼らは日常のたんぱく源として森のなかにすむ野生動物を求めることになる。『ブッシュミート(森の肉)』と呼ばれるこの野生動物食が熱帯林地域を中心に急拡大している。現金収入目的で、禁じられている動物を密猟したり、肉を都市部に送ったりという行動も増えてきている。これは生態系保全上の大きな問題となり、『ブッシュミートクライシス(危機)』と呼ばれるまでになっている。」(『自然保護』2020年7・8月号より)

  経済的な利益中心主義に基づく自然破壊は、地球に、そしてわたしたち一人一人に対して目に見える変化をもたらしています。それは地球温暖化にとどまりません。今回の新型コロナウイルス流行も、その大きな警告の一つなのです。

  わたしたちは被造物の「うめき」(ローマ8:22)に無関心であってよいわけがありません。わたしたち一人ひとりにできることは、まだいくつも残されています。

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